点滴漏れ後の皮膚潰瘍から

今、非常勤勤務している病院は
以前8年間、常勤で勤務していたことがあります。

先日、久しぶりに
懐かしい患者さんに会いました。

20年以上前ですが、他の診療科で治療中
ある薬を入れた点滴が
血管から外に漏れてしまい

皮膚に大きな潰瘍を作ってしまったのを
長く治療していた方です。

抗がん剤の点滴が漏れると
皮膚に潰瘍をつくりやすいものがあるので
注意しているのですが、

そのほかの薬では比較的めずらしく

でも、この薬は、高濃度で投与すると
潰瘍を作ってしまうことがあるのです。

今でこそ広く問題にされて
そんな投与の仕方はされませんが、

20年以上前、
同じようなトラブルが続きました。

学会で発表したり
絶対に高濃度はだめと
院内で広めて対応し、
おこらないようにしました。

でもその後、大学病院に戻ったら
やはり同じように高濃度で投与されて
凄い皮膚潰瘍となってしまった方がいて

また同じことをするのか、と思いながら
院内の啓発をしたのでした。

全国でも同じようなことが相次ぎ
それから製薬会社からも
厳重注意の警告が出され

高濃度での投与はされないように
なったはず・・。

もし今、投与されて点滴漏れして
皮膚潰瘍など作ったら、
間違いなく医療ミスで補償です。

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問題は発信して共有される
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こういった問題は情報を発信して
それを全国的にも共有することで
予防対策がしっかりとられていきます。

なので、起こったことも
起こりそうになったリスクも
きちんと報告することが必要です。

この薬、

確かに以前から
細かい文字の添付文書には

濃度は〇%以下でと
書いてありましたが、
隅々まで読まれていませんでした。

たいていの場合
問題は起こらないので

輸液量があまり多くなってしまうのも
望ましくないときもあり
やや高濃度で
投与されることもあったのでした。

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治療側も気を遣う
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そのころ、
コンフリクトマネジメントは
学んでいませんでしたが

治療を受けていた間に
できてしまったきず、

患者さんは
「どうしてこんなことに」
と思っても当然です。

皮膚科医として
こういった皮膚潰瘍の治療をする場合、
その原因とは関係はないわけですが

治療する医療者も気を遣うべき

治療側の医療者に対しては
患者さんの本音がでることがある

と思って
気を遣って治療をしていました。

そして起こらないように
再発防止につなげる。

今思うと、そのまま医療安全の世界に
つながりました。

「先生、テレビ見てたよー」
と言ってくれた彼女、

テレビとは、
大学病院での医療事故の記者会見のこと。

あなたの治療が
医療安全と関わることになった
はじまりだよ、

今はあんなことは
もう起こらないようになったから、

と懐かしく話したのでした。

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情報は共有されて進化する
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