その本は
又吉直樹、

(ポプラ社)

なんだ一体この本は、という感じ

大人気絵本作家と芥川賞作家のコラボ
こんな作品をつくれるのは
さすがのお二人です。

ある王国が作った本
本の好きな王様
もう年をとって目がほとんど見えない

二人の男を呼んで
「世界中の『珍しい本』について知っているものから
その本の話を聴き、私に教えてくれ

1年の旅にでて
二人は一晩ずつ交代で王様に話をする

その本は・・・

その本はとんでもない速さで走っている
・・・

その本は双子である
・・・

その本は嫌な人がもつと
面白くなさそう
笑顔の人が持つとなんだかおもしろそう
でも本棚に置くと目立たない
内容は同じなのに

その本は「若いころはモテた」が口癖
本棚で一番えらそうにしている
ほかの本たちは「めんどうだな」
と思いながら
その本を許してあげている

その本は私の顔写真が表紙
なかには私の個人情報や秘密が
すべて書いてあった
私は恐怖を感じた
しかし、本当の恐怖はそれからだった。
出版後3か月
私の生活には何の変化も怒らなかったのである。

その本は夢の中でしか
読むことができない
タイトルには「新しい友だちのつくり方」とあった
「かんたんだよ。笑顔でいたら
だれかが話しかけてくれるよ」

絵本作家になりたい、という
二人がお互いの絵に楽しいセリフをつけあい
交換日記を始める

娘の結婚式
病院の屋上で
最期が近い父が娘に語りかける10年前の映像
生まれる前から結婚式で吹こうと
練習していたトランペットを演奏する
「私の人生」というタイトルの真っ白な本

これは泣けます。

ボトルに手紙を入れて
海に流すようなことを
人間は本という形に託して
ずっと作り続けてきた

小さい、でもかすかに存在する可能性を信じて

「その本は・・」と思わず出てきてしまいそうです。
本が人と一体化してくるようで
愛おしくなります。

 

 

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