100歳でも手術

最近、メスを持つ機会が増えています。
以前はかなり大きな手術を
たくさん行っていました。

医療安全管理の仕事をやっていたころは
もう皮膚科の手術をすることはないと
思っていたのですが、

また手術を行うようになったら、
どんどん増えていきます。

久しぶりの手術もあって
本当はちょっと緊張したのですが、

手はよく覚えていて全体像がよく見えるという
感覚もあり、以前より余裕かもしれません。

でも目だけは眼鏡が必要なので
ここはやはり違いますね。。

さて、もう20年前の話ですが

100歳の方の顔の皮膚がんを
手術したことがあります。

直径2㎝高さ7㎜ほどの盛り上がった腫瘍。

皮膚がんはいろいろありますが、
顔にできる皮膚がんは

「日光角化症」という
前癌状態ができて
そこから発生してくるものが
一番多いのです。

日光角化症というのは「表皮内癌」です。

皮膚を断面にしてみた場合

角質が一番上にあり
その次に「表皮」というのがあり
次に真皮、脂肪とあるわけです。

表皮は表皮細胞からできており、
この細胞が悪性化したものです。

紫外線の影響が強いのです。

「日光角化症」は
悪性化した細胞が表皮内にだけあって
真皮には落ちていない状態です。

落ちてしまうと
皮膚がん、
有棘(ゆうきょく)細胞がん
となります。

これだけでも
書くと長いですね。。。

さて患者さん、

なんとか局所麻酔で
手術できそうだったので
手術をお勧めして

ご家族もこのままでは困ると
手術を受けていただくことになりました。

できれば全身麻酔にはしたくないし、
局所麻酔でも頑張って
一番短時間で負担なくリスク少なくと考え、

腫瘍をとったあと、
他から皮膚をとって植える
植皮という手術

看護師さんも
体制をとっていただいて、

動かないでいていただくのは
ちょっと大変でしたが、
なんとか無事終えました。

でも、もう少し早く来ていたら
簡単にできたのに
と思ったのです。

みえているのだから・・。

90歳過ぎた方で
時々おられます。

明かな皮膚がんでも、

「もうこの年で
いまさら手術は嫌だ!」

今や

もうこの年!でなくて、
まだその年!です。

あと何年も生きている
可能性のほうが
高いのです。

1年後、2年後
確実にがんは大きくなっていきます。

もちろん治療のリスクを考えて
どちらをとるかと
相談するわけですが、

手術できるのなら
何歳でも手術適応があると思って
その方向に説明してしまいます。

大きくなると
見た目も嫌だろし、
じくじくしたり、
臭くなったり、

どんな状態になるのかを
イメージできるように伝えて
できると思えば手術も強く
勧めてしまいます。

もちろん
どうしてもいやなら
そういった経過となることを
受け入れていただくしかありません。

顔の皮膚がんは
特に鼻や目の周りは
少し大きくなっただけでも
手術が難しくなるし

見えているのだから
できたら表皮内癌のうちに
気づいて来てくださいね、

と思うのです。

皮膚がんのもとになる

日光角化症の特徴

「かゆくない赤いシミ」

受診していただくように
もっとお伝えしていきます。

20年前、

100歳の患者さんの内科の主治医の先生は
ベテランの穏やかな方でした。

「ちょっと大変でしたが
なんとかきれいにできました。」

「ありがとうね。
こんなこと言っちゃ
いけないかもしれないけど

女性の顔は最期もキレイなほうが 
いいよねえ。」

お人柄の出る
素敵な言葉でした。

ふと、この時の会話を思い出したのでした。