いろいろな皮膚疾患や医療のトピックをお伝えしていきます。
蕁麻疹(じんましん)の話
蕁麻疹は非常に身近な病気であり、経験したことがある方も多いでしょう。
かゆみのある赤い発疹が出たり消えたりするのが特徴です。
蕁麻疹と診断する3つのポイント
「蕁麻疹」の特徴です。
- それぞれの発疹は24時間以内に消える
したがって、体のどこかに発疹が出ていることも、完全に消えていることもあります。出てくるとかゆく、消えてしまえばかゆみはありません。
病院を受診されたときには何も出ていないこともあります。出たり消えたりする、という特徴は他の病気にはないので、お話からだけでも診断できますが、最近は皮疹が出たときの写真をスマホで撮影していらっしゃる方が増えました。
- 発疹は少し盛り上がったピンク色
「蚊に刺された時の赤くふくれた発疹」というとわかりやすいです。形は丸いこともありますが、くっついて大きくなってしまうこともあります。
- 消えるとあとを残さない
蕁麻疹の発疹は消えてしまうと何も残りません。茶色くあとを残すようなものは、別の疾患を考える必要があります。
原因はわからないことが多い
「原因はなんですか?」一番良く聞かれる質問です。
蕁麻疹は経過によって急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹の2つに分けられます。
急性蕁麻疹は皮疹が出始めて数日から数週間でおさまってしまうものです。食べ物や薬、何らかの感染症など、原因がわかることもありますが、全部とはいえません。血液検査でも原因を突き止めることは難しいのです。
慢性蕁麻疹は症状が1か月以上繰り返して続くものです。このうち9割くらいは原因がわからない「特発性蕁麻疹」なのです。
慢性蕁麻疹はしっかり飲み薬を続けること
原因がある場合にはそれを避ける必要がありますが、蕁麻疹の治療は抗アレルギー薬の飲み薬が基本です。最近の薬は、眠気の副作用は少ないものが増えてきました。急性蕁麻疹のときには、症状が治まったところでいったんやめてみてもよいでしょう。大丈夫であれば治療終了です。
慢性蕁麻疹の治療で大事なのは、良くなったからと言ってすぐに飲み薬をやめてしまわないことです。やめたらまた出てきた、ということを繰り返すとずっと続いてしまいます。発疹が出なくなっても最低1か月くらいは続けて、その後、少しずつ薬を減らしていきます。数ヶ月あるいは数年に及んで薬を飲み続けていただくこともあります。
ひとつの薬で十分に効かないというときには、薬を変えたり増やしたり、作用の違う薬を使ったりします。効果が十分でない、日常困るという時には、きちんと症状を伝えましょう。
危険な蕁麻疹:アナフィラキシーの症状であることも
「アナフィラキシー」という言葉を聞いたことがあるかと思います。体に入ってきた原因となるものに対して強いアレルギー反応を起こし、血圧が下がってショックになってしまったりするものです。
たとえば、ハチ刺されのアレルギーが強くでるとアナフィラキシーを起こしますが、このときに体に出る発疹は蕁麻疹です。刺された部位以外に皮疹が出てきたときにはすぐに受診が必要です。
フルーツを食べると口の中が痒くなる、手袋のゴムに触れて蕁麻疹を起こすといったフルーツ・ラテックス症候群という病気があります。蕁麻疹と同じ状態が口の中の粘膜におこることがあり、そうなると喉が腫れて呼吸ができなくなってしまうことがあるため危険です。体の蕁麻疹に加え、口の中がおかしい、息苦しいといったときは急いで受診する必要があります。
薬による蕁麻疹の場合には、その薬を今後使わないようにしなければなりません。
悪化させる要因となること
引っ掻いたり、荷物を持って力がかかった場所にだけに蕁麻疹がでることがあります。このほかにも、入浴であたたまる、急に冷えるといった温度差、汗をかくなどの皮膚に刺激を与えることは、蕁麻疹が悪化するきっかけになりやすいものです。蕁麻疹がおさまらない状態のときには、こういった刺激を避けるようにしましょう。
市販のかゆみ止めの薬は?
病院でかゆみ止め、蕁麻疹の薬としてよく処方する医療用の薬は、市販でも購入できるものがあります。しかし、病院で近年よく使っている抗アレルギー薬の多くは、市販ではアレルギー性鼻炎にしか適応となっていないものが多いのです(アレグラFX、アレジオン、クラリチンなどがあります)。
かゆみや蕁麻疹の薬として市販で購入できるものは、比較的古くから使われていた抗ヒスタミン薬が多く、眠気が出る頻度が高い傾向があります。とりあえずの対応には使ってみてもよいですが注意が必要です。
上手に付き合うために
蕁麻疹は時に、あっという間にひどくなったり、重症になったりすることもあり、息苦しさがあるようなときには急いで受診が必要です。原因がわかる場合にはそれを避ける必要があります。
また、慢性の場合、どんな状態になったら薬をやめられるのか、先の見通しをしっかり知ることが上手に病気と付き合うことにも繋がります。
きちんとした診断と治療方針の確認が必要です。自分でも正しく把握できるように、基本的な知識を持ち、わからないことは医師に尋ねましょう。
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